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家畜が食べる遺伝子組み換え飼料、食卓のお肉や牛乳への影響は?

Tags: 遺伝子組み換え, 家畜飼料, 安全性, 食品表示, 畜産物

私たちの食卓に並ぶお肉や牛乳、卵は、家畜が食べた飼料によって育まれます。その飼料の中に「遺伝子組み換え作物」が含まれていることがある、という話を聞いたことがあるかもしれません。

遺伝子組み換え作物が家畜の飼料として使われていると聞いて、「それが、私たちが食べるお肉や牛乳に影響するのではないか?」「安全性は大丈夫なのか?」と疑問や不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

この疑問は、遺伝子組み換え作物について考える上で大切な視点です。この記事では、家畜が食べる遺伝子組み換え飼料はどのようなものか、それが家畜や最終的に私たちの食卓に並ぶ畜産物にどのような影響を与えるのか、科学的な知見に基づいて分かりやすく解説していきます。

家畜の飼料として遺伝子組み換え作物が使われる現状

世界中で生産される遺伝子組み換え作物の多くは、人間の食用としてだけでなく、家畜の飼料や、油、でんぷんなどの加工原料としても利用されています。特にトウモロコシや大豆といった作物は、栄養価が高く、世界的に大規模に生産されているため、畜産にとって重要な飼料源となっています。

なぜ遺伝子組み換え作物が飼料として利用されるのでしょうか。主な理由の一つに、安定的な供給とコストがあります。特定の病害虫に強い、あるいは特定の除草剤に耐性を持つように開発された遺伝子組み換え作物は、従来の品種よりも安定した収穫が期待でき、栽培管理の効率化につながることがあります。これにより、飼料全体の価格を抑えることにも貢献していると言われています。

日本国内で使用される飼料穀物の大部分は輸入に頼っており、その中には遺伝子組み換えのトウモロコシや大豆などが含まれています。日本の家畜飼料全体に占める遺伝子組み換え作物の割合は、時期や畜種によって変動しますが、一定量が利用されているのが現状です。

遺伝子組み換え飼料は家畜に影響する?

遺伝子組み換え飼料が家畜の健康や成長に悪影響を与えるのではないか、という懸念を持つ声もあります。これに対し、世界中の多くの研究機関や規制当局が、長年にわたり遺伝子組み換え飼料が家畜に与える影響について調査・評価を行ってきました。

現在の科学的な知見では、遺伝子組み換え飼料を摂取した家畜と、非遺伝子組み換え飼料を摂取した家畜の間で、健康状態、成長、生殖能力などに有意な差は見られないとされています。

例えば、ヨーロッパの食品安全機関(EFSA)やアメリカの食品医薬品局(FDA)など、各国の規制当局は、飼料としての遺伝子組み換え作物の使用を許可する前に、厳格な安全性評価を行っています。評価では、遺伝子組み換えによって新たに作られたタンパク質が家畜の消化器官でどのように分解されるか、栄養価はどうか、アレルギーを引き起こす可能性はないかなどが詳しく調べられます。

遺伝子組み換え飼料を食べた家畜のお肉や牛乳はどうなる?

家畜が遺伝子組み換え飼料を食べた場合、その遺伝子や作られたタンパク質が、お肉、牛乳、卵といった畜産物に残るのではないか、と心配されるかもしれません。

しかし、生物の消化の仕組みを考えると、この可能性は極めて低いことが分かっています。家畜が遺伝子組み換え飼料を食べると、含まれるDNAやタンパク質のほとんどは、家畜の消化器官で細かく分解されます。分解された成分は、他の通常の飼料由来の成分と同じように、家畜の体内で吸収・利用されます。

つまり、遺伝子組み換え作物特有のDNAやタンパク質が、分解されずにそのままの形で家畜の肉や牛乳、卵に移行することは、科学的にはほとんど考えられないとされています。国際的な研究機関や各国の食品安全機関も、この点について共通の見解を示しています。

したがって、遺伝子組み換え飼料を食べて育った家畜から得られたお肉や牛乳、卵が、遺伝子組み換え作物自体とは異なる新たな特性を持つようになる、あるいは遺伝子組み換え成分が残留して人の健康に影響を与える、といった科学的根拠は確認されていません

遺伝子組み換え飼料に関する表示はどうなっている?

日本の遺伝子組み換え食品表示制度では、食品としての遺伝子組み換え作物の表示が義務付けられています。しかし、畜産物(肉、牛乳、卵など)や魚介類、その加工品には、飼料に遺伝子組み換え作物が使用されていても、遺伝子組み換えの表示義務はありません

これは、前述のように、家畜が遺伝子組み換え飼料を摂取しても、その遺伝子組み換え成分が畜産物中に残留する可能性が極めて低いという科学的根拠に基づいています。最終的に消費される畜産物が、遺伝子組み換え作物そのものとは区別されるためです。

ただし、一部の事業者では、飼料に関する情報を消費者に伝えるために、「遺伝子組み換え飼料不使用」といった独自の表示を行っている場合もあります。このような表示は、国の義務ではなく、事業者が自主的に行っているものです。

まとめ:科学的根拠に基づいた冷静な理解のために

家畜が食べる遺伝子組み換え飼料について、私たちの食卓に並ぶ畜産物への影響や安全性の観点から解説しました。

遺伝子組み換え作物の利用については、様々な意見や懸念が存在します。しかし、家畜飼料に関する情報は、科学的な根拠に基づき、冷静に理解することが重要です。不明な点があれば、国の機関や専門家が提供する情報を参照することをおすすめします。

GMOフロンティアでは、今後も遺伝子組み換え作物に関する多角的な情報を提供してまいります。