【素朴な疑問】遺伝子組み換え作物を食べても私たちの体内の遺伝子は変わらない?安全性と仕組みを解説
遺伝子組み換え作物について調べていると、「食べると自分の遺伝子が変わってしまうのではないか」といった漠然とした不安を耳にすることがあります。お子さんやご家族の健康を考えるとき、このような疑問は当然のことと思います。
この疑問に対して、科学的な観点からお答えすると、遺伝子組み換え作物を食べたからといって、私たちの体内の遺伝子が変わることは基本的にありません。この記事では、なぜそう言えるのか、その仕組みや安全性確保の考え方について分かりやすく解説します。
食べたものは体内でどうなる?消化の仕組み
私たちが食事として口にしたものは、体内で消化吸収というプロセスを経て利用されます。ごはんやパンに含まれるでんぷん、お肉やお魚のたんぱく質、野菜に含まれる食物繊維やビタミンなど、様々な成分が、口、胃、腸といった消化器官で細かく分解されます。
例えば、たんぱく質はアミノ酸に、でんぷんはブドウ糖といった、体が吸収して利用できる小さな分子に分解されるのです。
遺伝子も消化・分解される
遺伝子組み換え作物を含む、全ての生物の体には「DNA」と呼ばれる物質が含まれています。このDNAは、体の設計図のようなもので、様々な情報を持っています。遺伝子とは、このDNAの中にある、特定の機能を持った部分のことを指します。
私たちが遺伝子組み換え作物を食べたとき、その作物に含まれるDNAや遺伝子も、他の食品成分と同じように消化器官で分解されます。DNAは、デオキシリボ核酸という大きな分子ですが、消化酵素によって非常に小さな単位(ヌクレオチドなど)にまで分解されます。分解された成分は、体の構成要素として吸収されたり、エネルギー源として使われたりしますが、消化管からDNAのまま体内に吸収され、それが私たちの細胞の遺伝子に組み込まれるということは、通常の健康な状態では起こりません。
これは遺伝子組み換え作物のDNAだけでなく、普段食べているお肉や野菜、果物といったあらゆる食品に含まれるDNAについても同様です。
遺伝子組み換え技術と体内の遺伝子
遺伝子組み換え技術は、ある生物から取り出した特定の遺伝子を、別の生物(例えば作物)に組み込む技術です。この技術の目的は、作物に病気に強くする、害虫に食べられにくくするといった、特定の有用な性質を持たせることです。
しかし、この技術が私たちの体を構成する細胞の遺伝子を直接変化させるわけではありません。私たちは食べ物から栄養を得て体を維持していますが、食べ物に含まれる物質(DNAを含む)が、私たちの生殖細胞や体細胞の遺伝情報そのものを書き換えるような仕組みは、生物の基本的なメカニズムとして備わっていません。
安全性審査で確認されること
遺伝子組み換え作物は、食卓に並ぶまでに国による厳しい安全性審査を受けています。この審査では、開発された遺伝子組み換え作物が、アレルギーの原因とならないか、毒性はないかといった点に加え、体内でどのように消化・分解されるのかといった点も詳しく調べられます。
新しい遺伝子が体内で分解されずに残ったり、予期せぬ影響を与えたりしないかどうかが科学的に評価され、安全性が確認されたものだけが流通を許可されています。
まとめ
遺伝子組み換え作物を食べても、それが直接私たちの体内の遺伝子を変化させることはありません。これは、遺伝子組み換え作物に含まれるDNAや遺伝子が、他の食品成分と同様に消化器官で分解されるためです。私たちの体には、食べたものの遺伝情報が体細胞や生殖細胞の遺伝情報を書き換えるような仕組みは備わっていないのです。
遺伝子組み換え作物の安全性については、科学的な根拠に基づいた評価と厳しい国の審査が行われています。漠然とした不安を感じるときは、こうした基本的な仕組みや安全性を確保するための取り組みについて理解を深めることが、安心して食卓に向き合うための一助となるでしょう。